離婚

離婚事件に思うこと

離婚とは、相手方と戦うことではなく、病理と闘うこと

 弁護士登録をしてから約9年間の業務において、3,500件以上の法律相談を受け、そのうちのおそらく1,500件程度が、離婚・家族・男女問題でした。家族という緊密かつ閉鎖された関係性のなかで、一切悩みがないという人などいません。家族問題でご相談に来られる方々は、もはや修復不可能な状況で、疲弊しきっています。
 心が傷つけられた状態で法律相談を受けるということ自体がまずストレスです。ですから、弁護士がその心をさらにえぐるということはあってはなりません。まずは、今後訪れるであろう離婚という大きな壁に対して立ち向かえるだけの安心感や決意といった土台を固めることが必要です。
 また、離婚問題は、法的処理・法的解決だけを見れば単純です。それよりも重要なのは、家族関係における病理の根本原因を突き止め、相談者がそれに立ち向かい、闘うことで、今後の人生を取り戻す契機を見つけることです。これは一人だけでは到底できません。周りの皆の理解と支えがあって初めて成し遂げられるものです。

 上記のことは、言葉にすればできそうに思えますが、現実はひどく困難です。私も心が折れそうになることが多々あります。ですが、弁護士と相談者が一緒になって悩み考えることで、うっすらと光が見えてくることもあります。
 依頼者の方の人生を取り戻すお手伝いができれば、これ以上嬉しいことはありません。



離婚調停について

弁護士に委任をする意義・メリット

 離婚調停は、裁判所を舞台にした当事者同士の話合いといえます。喧嘩ではなく話合いですから、何も弁護士に委任する必然性はないようにも思えます。確かに、養育費の金額の設定のみで財産分与などは無いという事案であれば、弁護士介入の必要性は低いといえます。では、弁護士委任の意義はなんでしょうか。

① まずは、「弁護士が盾となること」でしょう。裁判所(調停委員)は中立かつ公平な第三者といえども、どうしても調停を成立させる方向へ無意識の力が働き、「説得しやすそうな当事者を説得しがち」になってしまいます。そうすると、あるべき解決から離れた解決に持っていかれてしまいます。これの盾となるのが弁護士です。

② 次に、「合理的・効果的な交渉ができること」です。人が説得され、譲歩し、和解に応じるためには、強い心理的影響を受けなければなりませんが、その影響の内実には、いろいろなものがあります。法的根拠などの理屈(情報勢力)、裁判官・弁護士という権威(専門勢力)、この和解案に応じた方が得か損かという勘定(報酬勢力、強制勢力)などです。これらを駆使して、相手方の譲歩を引き出すのが弁護士です。

③ 次に、「漏れのない調査をすること」があります。特に財産分与では、目に見えない財産(保険金、退職金など)をも対象にする必要があり、これらの情報を漏れなく引き出すためには一定の専門知識が必要です。

④ 最後に、「依頼者の方が損にならないように歯止めをかけること」もあります。離婚事件では、将来不安からどうしても感情が先走ってしまい、合理的な判断ができなくなってしまいます。交渉には「機運」というものがあります。相手方も人間です。相手方配偶者を殲滅しようとしてしまうと、この機運を逃し、最終的により悪い結果を受け入れなければならなくなってしまいます。これを防止するのが、味方の弁護士です。



婚姻費用・養育費について

それほど単純なものではありません

 婚姻費用や養育費については、裁判所の「算定表」がありますので、大まかな金額を簡便に知ることができます。

 ただし、妻子の住む自宅の住宅ローンを夫が負担している場合、子が私立学校に通学している場合、夫婦双方の収入をどのように算定したらいいか不明な場合など、特別な考慮をしなければならない場面も多くあります。この場合には、専門知識を有する弁護士にご相談ください。

 また、特別な事情がない場合でも、養育費等の金額の設定において、効果的な交渉を行う余地は多々あります。法的根拠あるアイデアをもって行います。

 夫婦間で大まかな合意してしまう前に、一度ご相談いただくことをお勧めします。



親権・監護権について

全ては子のために

 離婚事件で一番センシティブかつ悩み深いのが、親権者・監護権者の指定です。
 父と母のどちらが監護権者に相応しいかという判断基準としては、①監護の継続性維持の原則、②(乳幼児は)母性優先の原則、③子の意思尊重の原則、④きょうだい不分離の原則、⑤面会交流寛容性の原則、というものがあります。
 この基準はすべて「子の利益に合致するか」という視点で貫かれたものです。

 夫婦にとってみれば、どちらが子を引き取るかという点では、100かゼロかであり、対立が激化します。
愛という名の正義と正義がぶつかり合う訳です。
 しかし、子は、母の分身であり、かつ、父の分身でもあります。両親が争うのを見ると、子は自分が否定された気持ちになります。その悲痛さはどれほどに大きいものかということについて、両親は想起しなければなりません。


 夫婦は離婚しても、子にとっての父と母は変わらない。どちらが親権者となるにせよ、この点だけは変わってはいけません。100かゼロかではなく、どのように父と母が子に関わっていくかを建設的に考えなければいけません。

 当事務所の弁護士は、発達心理学等を学んでいますので、子にとっての両親の在り方に関して、ぜひご相談いただければと思います。一緒に考えましょう。

離婚慰謝料について

慰謝料支払いの意義は千差万別

 離婚原因を作出した配偶者が、他方配偶者に対して支払うものが離婚慰謝料です。この離婚慰謝料は、①離婚自体慰謝料(離婚をさせられること自体の精神的苦痛)と、②離婚原因慰謝料(離婚に至る原因事実(不貞行為など)によって受けた精神的苦痛)に分けられます。

 離婚の原因において、夫婦のどちらかが一方的に悪いという場面はありえません。夫婦の心の在りようはいわば「鏡」ですから、相手方が自分に対して行った数々の「悪いこと」は、自分の相手方に対する言動の跳ね返りであることがほとんどです。こういうことを言うと、反発を食らいそうですが、離婚に至る夫妻は、その双方が、「悪いのはアイツ、可哀そうなワタシ」という考えから抜けられないのが事実だと言わざるを得ません。人間はいわゆる自己中心性バイアス(自分の都合のよいように物事を捻じ曲げてみてしまうこと)のなかで生きていますから、どちらか一方がまずこのバイアスから抜け出せられなければ、夫婦は必然的に離婚に至ってしまうといってもよいかもしれません。

 しかし、離婚原因として一般的に挙げられるもの(不貞、暴力、扶養しない等)が、証拠によって目に見えて明らかな事案。これに対しては、裁判所は離婚慰謝料を認めています。

 では、証拠がなく目に見えて明らかでない事案の場合に、慰謝料を請求することはできないのか。上記のとおり夫婦の双方が悪いといえども、やはりどう考えても一方のほうがより悪く、他方を慰謝する必要があることも多いものです。これに対しては、知恵を絞る必要があります。一般的に、所得の低い妻が所得の高い夫に対して慰謝料を請求する場合には、解決金もしくは扶養的財産分与という名目で慰謝を受けることが可能な場合があります。

 一般的な離婚慰謝料は、100万円~300万円ですが、交渉次第でこれ以上に得られるという場合もあります。これは夫婦双方の地位やキャラクターにより様々です。

 慰謝料を支払う側、受け取る側、いずれにおいてもその意義を深く考える必要があると思います。深く考えないと、次につながりません。



男女トラブル

不貞慰謝料について

不貞慰謝料請求ちょっと待った


 一方配偶者が、不貞を働いた他方配偶者ではなく、第三者に対して請求する場面です。裁判所が認める慰謝料相場は、不貞を原因として夫婦が離婚に至った場合は150万円程度、離婚に至らない場合は100万円程度がおおよその基準で、あとは事案の特性により数十万円程度変動があります。
 このような紛争はかなりの数に上り、あたかも第三者に対して慰謝料を請求できることが当たり前であるように世間では思われています。しかし、欧米諸外国ではほぼ認められておらず、日本の法律家の間においても原則として認めるべきではないとの見解が支配的なのです。
 実際の事案をみていても、不貞を働いた夫が妻と離婚をしたくないために、妻に協力して、第三者女性だけに慰謝料を支払わせるよう画策する、というものがあります。この場合、妻の権利をまず第一に守るべき主体は誰でしょうか。守操義務を負う夫に他なりません。第三者女性は、妻の権利に対しては、一般的な婚姻秩序を守るという義務しか負っていません。夫の義務と第三者女性の義務は、質的にも量的にも全く異なるのです。ほかにも、第三者に対する不貞慰謝料を認めるべきではないという根拠は多々あります。
 しかし、最高裁判所がこのような請求を認めている以上、実務上は請求可能です。個人的には、上記のような配慮は、慰謝料の金額の設定に反映させるべきではないかと考えています。
 また、配偶者に対する離婚原因慰謝料としての不貞慰謝料と、第三者に対する不貞慰謝料との関係、どのような交渉が効果的なのかについては、専門的知識ないし実務的経験を要しますので、ご相談ください。

男女間の金銭トラブル

男女間金銭トラブルは是非弁護士の活用を
 
男女間の金銭トラブルは、その金額の大小、紛争の類型が様々です。しかし、どの事案でも共通するのは、男女間の感情の対立がその基底にあるということです。多くの当事者は「金の問題ではない、誠意の問題だ」と考えます。強い感情が絡みますので、当人同士の話合いが困難な場合が多いです。
そのため、弁護士を間に入れる必要が大いにあります。当事者本人の口から言えば相手方への刺激になってしまうことが多く、第三者弁護士でしかできないセンシティブな交渉だからです。
弁護士には、当事者双方の心の機微に対する敏感さと、それらを尊重しようとする態度が要求されます。
事件の解決と合わせて、依頼者の方の心のわだかまりの解消もできるように努力させていただきます。